アルツハイマーの彼女【短編小説】

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僕の彼女は若年性アルツハイマーである。
最近僕のことを忘れることがある。
覚悟していたことだが、やっぱり愛する人に忘れられるというのは想像以上に辛い。
僕はそんな彼女に対して絶対にしてはいけない苛立ちを見せている。
彼女が僕のことを思い出しても
僕は彼女に冷たい態度で接していた。
できることなら僕も彼女のことを忘れたい。
そうしたらこんなに辛い思いをすることはないのだろう、そんなことを思ってしまった。

そんな時、彼女は僕に一枚のDVDを渡した。
彼女「私がまだ圭ちゃんを覚えているうちに渡しておきたいのもがあるんだ。今度時間あるときで良いから見てくれないかな」
僕はそのDVDを受け取った。
そして僕は家に帰りそのDVDを見た。
そこには彼女が必死に僕を忘れないよう、僕に向けてたくさんの愛の言葉を話していた。

彼女「圭ちゃんは私の一番の大切な人。絶対に覚えておきたい人です。」

そして彼女は言った、
自分が大切な人を忘れるということはその大切な人が自分の前からいなくなってしまうかもしれない。
そうしたら自分のことを忘れてしまうかもしれない。それが堪らなく辛いと。

彼女「だけど、私は圭ちゃんのことを忘れちゃうかもしれない。本当は絶対に覚えておきたいしずっと一緒にいたいけど、でも私がもし圭ちゃんのことを忘れてしまったら圭ちゃん私の元から離れちゃうよね。
いや、でもそれで良いの。
私、圭ちゃんには幸せになってほしいから。
圭ちゃんが私と一緒にいて辛い思いをするのなら、他の誰かの元で圭ちゃんが幸せでいてくれる方が私は嬉しい。・・・けどずっと圭ちゃんと一緒にいられるのが一番嬉しいかな。一人ぼっちは寂しいよね。
・・・って、好きな人の幸せを願うのが本当の愛なんだよね・・。なのに自分勝手なことばっかり言ってごめんね。圭ちゃん、もし辛かったら私の元から離れていいからね。」

僕が彼女に忘れられるのが辛いのと同じように彼女も僕たちに忘れられるのが辛いのだ。
だから彼女はできるだけ僕を忘れないように僕がどれ程大切な人であるかDVDで語ってる。
思えば、彼女の病室は僕があげたものでいっぱいだった。
かわいくもないぬいぐるみをいつも抱いているのは、ゲーセンで僕が取ったものだった。
彼女は彼女なりに僕を必死に覚えようとしてくれている。
彼女は忘れたくて僕を忘れるのではない。本当は覚えていたいはずだ。
僕は彼女に冷たい態度を見せていたことを反省した。僕は彼女から逃げていた。
僕ができることは何があっても彼女の元から離れないことだ。僕にできることはそれだけだと気づいた。

明日病院に行って彼女に謝ろうと決めた。そして彼女が僕のことを覚えている間はたくさんの思い出を作ってあげようと決めた。

今日、僕は病室に向かった。彼女は起きていた。僕は彼女に話しかけたが彼女は僕を覚えていなかった。

#ガールズトークショー

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